12月30日
【松下幸之助さんの発言集】
【真実を伝えながら、多くの人にきく】
昭和48年8月20日、松下電器会長退任に際してのあいさつ(78歳時)
私が商売を始めました当初は、電機業界というものにおったわけではありません。 商売を始める6年ほど前は、大阪船場の小売商にでつちとしておりましたけれども、 それから6年間は、大阪電灯会社の配線工として働いておりました。
だから商売も違いますし、電機の業界というものも知らなかった。 いわばまったく未知の世界に入っていったようなわけであります。
そういったまったくの経験のない素人が、電気器具の製造に乗り出しまして、 そうして材料を仕入れ、しかも、 幼稚な製品でありますけれども、製造してそれを売る、買ってもらう。 それがなんぼで売っていいのやら、なんぼほど口銭を取っていいのやらさっぱり分からない。
しかし、 商売をやっていかなくちゃならないということで、 全部それはお得意さんに教えてもろうたんです。
電器屋さんへ行って、 「こういうものをつくりました。 これはなんぼで買ってもらいたい」 と言うんじゃなくして、 「なんぼで売ったらいいんでしょうか」と、 そういうことを問屋さんの主人公なり番頭さんに会って、そして教えてもらいつつやってきたわけです。
今日の松下電器は、つくったものは原価なんぼである、そして、 これをどういうふうに宣伝し、どういうふうに販売したらいい、 小売屋さんにはどういうことを訴えたらいい、問屋さんにはどういうようなことを話して、問屋さんの小売りはどのくらいであったらいいというようなことまでも、 われわれが、あらかじめ判定いたしまして、 それを申し上げてご得心願うというような状態になっております。
しかし、当初はその反対であった。 先方で値段をつけてもらって、先方で、これくらいだったらいいだろうと、 こういうことを教えてもらいつい1年間はやったわけであります。
それで、そのときに私が会得したものは、結局、真実を訴えるということでした。 「自分こういうようにやった。 原価はこのくらいについている」というような話をすることによって、 「それであれなんぼに売ったらいいんじゃないか。 なんぼで買うてあげよう。
そうしたら儲かるやないか。きみとこそれでやっていけるかどうか」ということを、 問屋さんの主人公が言うてくれる、 そういうことで商売をやっていったわけです。
それですから、 そういうことには素人であるけれども、真実を話すことによって通っていったということであります。 これが松下電器の商法といえば商法であった。
それで、そういう姿から、松下の品物は、当時非常に難しい技術の要らんもの、 目に見て分かるようなものでありましたけれども、次々と新しいものを考案してもっていく。 それが当時といたしましては常に斬新なものであった。
そして品質も他と比べて遜色はない。 斬新で品質も遜色なければ売れるわけであるということで、だんだんと世に出てまいりました。
そういうような過程のうちに、商売の心がまえといいますか、商売のあり方というものはこういうものやなということが分かって、 それが会社の指導方針とでもいいますか、 経営方針になってきたわけであります。
そういうことを考えてみると、 私は大は大なりに、小は小なりに、やはりやっていく道というものがあると思うのです。 それはどういうことかというと、結局、多くの人にきかないといけない。
きくということは、言葉に出して相手の意見をきくということもきく一つである。 こういうことはどうしょうかということを、お得意なり社会にきく。
すると、それはこういうふうにしたらどうかという話される。 そういう声をきくという場合もありましょう。
しかし、そういう声ではなくして、 その同じことが無言のうちに語られる。
極端にいうと、 顔色を見て、この人は今何を考えているか、何を思っているのか、 何を訴えているのかということを察知できないようなことではいけない。
その後は、いちいちそうきいているというわけにいかんから、 だいたいそういうところから、いわゆる業界の声なき声を聞いて、 これはこうすべきである、 こういうように訴えたらそれでいいと、みずから判定するようになったが、 自分の独断で決定するんじゃないわけであります。
自分の独断で決定するようであって、 それは全部業界の声を聞き、 需要者の声を聞く。
そして、その需要者の声には、甲の声、乙の声、みな違う、 その違うのをやはり取捨選択して、 これが代表的な共通の声だなあということを察知して、 それを実行に移すというようなことが、 私は今日の成功といえば成功であった原因じゃないかという感じがするのであります。
そうでありますから、大なる小なるとを問わずして、 その部に長たる人、課に長たる人、 聞くことを多くして自分の言うことは少なくなる。 こういうような態度でなければいけいかん。
松下電器全体を見たときに、松下電器は声ばっかり高い、 文句ばっかり言うておる、というような声になると困る。
やはり、 松下電器は無言にしてこつこつ仕事をしていっている、 そうして、ちやんとお客さんのかゆいところに手が届くというような会社になることが望ましい。」
と幸之助さんが話しておられます。
【心のイケメンスーパーエネルギーマネージャー高峰の見解】
幸之助さんはお客様の要望に的確に応じていこうということが経営哲学であったと言われます。
ありがとうございます。